京都検定講習会レポート

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京都検定現地講習会 ~嵯峨野を歩く-清凉寺~檀林寺跡~


  

  日時:2008年9月27日(土)
  解説:龍谷大学非常勤講師 松波先生


嵯峨野を歩く-清凉寺~檀林寺跡

今回は『嵯峨野を歩く』シリーズの第1弾
清凉寺をゆっくり見学した後、檀林寺跡まで散策しました


清凉寺仁王門

清凉寺仁王門



清凉寺と言えば、源氏物語ゆかりのお寺。
源氏物語誕生1000年の今年、大注目ですね


と、講習会に入る前にちょっと時間があったので…

清凉寺大文字屋

仁王門横の「あぶり餅」の文字が・・・



清凉寺あぶり餅 無病息災を願う「あぶり餅」

今宮神社が発祥ですが、
   嵯峨野にもあったんですね

こちらの大文字屋さんは、
清凉寺1200年を期に、創業されたそうです

お餅に黄な粉をまぶし、炭火で焼いて

白味噌だれでいただきます

かな~り、おいしい




まずは、清凉寺(せいりょうじ)について

・通称「嵯峨野釈迦堂」
・嵯峨野一帯は昔、原野だったが、嵯峨天皇が別荘地とし、開発が進む
・嵯峨天皇の皇子、源融(みなもとのとおる)は、嵯峨野に棲霞観(せいかかん)という
 道教寺院を建てた。源融の没後、寺に改められ「棲霞寺」となり、清凉寺へとつながる
 この源融が、源氏物語の主人公、光源氏のモデルとされる

清凉寺本堂

清凉寺本堂
1701年、5代将軍綱吉と生母桂昌院により再建
(堂内の宮殿に、葵の紋を見ることができる)



本尊 三国伝来生身釈迦如来(さんごくでんらいしょうしんしゃかにょらい)

このご本尊、話を聞けば聞くほど、すごいんです
日本三如来のひとつ(他は平等寺の薬師如来、長野県善光寺の阿弥陀如来)
普段は非公開のご本尊。今回特別に見せていただきました!

インドにあった、釈迦37歳の生き姿を刻んだ像。 それが、中国に渡った。
奈良東大寺の僧ちょう然(ちょうねんの「ちょう」は「大の下に周」って字)は、中国でその像を模刻して持ち帰った。
この像が清凉寺の本尊、釈迦如来
モデルとなった中国の像が行方不明のため、生身の釈迦像はこの1体のみとなった

・両肩とも衣を着ている(片肩を出していない)。衣は同心円状の模様
・頭髪は螺髪ではなく、長い髪を編んで頭に巻いている

を特徴とし、「清凉寺式釈迦如来」と呼ばれる
鎌倉~室町時代にかけ、写しが多く作られた。(100体以上確認されている)

写しが作られていくにつれ、姿はだいぶ変わっていったようです
(衣の模様や、手の大きさで、作られた時代が推察できる)




「五台山 清凉寺」ってあるけど、「五台山」って?

東大寺の僧ちょう然が宋から帰り、
お寺の背後にある愛宕山を中国の仏教聖地・五台山になぞらえ、
清凉寺建立を計画したことによる


では、霊宝館特別公開へ(11月30日迄)

霊宝館に入るとすぐ、左手に大きな三体の像が目に入る
国宝の阿弥陀三尊座像

光源氏のモデルとされる源融(みなもとのとおる)の一周忌に
供養として造られた。棲霞寺の旧本尊。
源融に似せて造られたといい、「光源氏写しの顔」の伝説がある

この阿弥陀さまは平安前期の作。
この時代の像が現存してるのはとても貴重
なのに、こちらの阿弥陀三尊座像はあまり知られてなかったそうです
それが今年の源氏物語千年紀で、脚光を浴び人気が出てきた

平安前期の阿弥陀さまは、
・顔がひきしまり ・体はぶ厚く ・衣のひだが深い

これが平安後期になってくると、
・顔が少し優しくなり ・衣のひだが浅くなる

たくさん見比べると、わかってくるでしょうか…


また、密教の影響を見て取れる
 ・左右の観音脇至は、手が密教の手印を結んでいる
 ・垂れた髪
 ・大きい腕輪

 嵯峨天皇といえば、空海の最大の理解者。
 この像が密教の影響を強く受けていることと、関係してるのかも


この霊宝館には、もうひとつとっても珍しいものが
それは、国宝 釈迦如来立像体内納入品

本堂のご本尊、三国伝来生身釈迦如来
昭和28年に調査が行われ、体内から250点にも及ぶ納入品が見つかりました!
これら納入品は全て国宝指定

その中に、五色のシルクで作られた「五臓六腑(内臓器官)」
心臓、肝臓、脾臓、肺、などが血管?でつながった、世界最古の内臓模型
実物は釈迦如来の体内に戻されましたが、レプリカが展示されています


この他、たくさんの重文指定の像がありましたが、
かつて、平安京羅生門に安置され、都を守ったとされる東寺の兜跋毘沙門天
この像の模像のあった!



本堂&ご本尊、霊宝館特別公開ときて、お次は清凉寺の境内のレポートを

まずは、楽し~い?一切経蔵(きょうぞう)

清凉寺傅大士像

傅大士(ふだいし・中央) 


お釈迦さまが説かれた一切のお経が、回転する蔵に納められている
この転輪蔵を1回転(1周)すれば、一切のお経を読んだのと同じ功徳が得られる
傅大士は発案者

清凉寺転輪蔵1 清凉寺転輪蔵2

ちょっとわかりにくい写真ですが…
左が転輪蔵。この中にお経が入ってます。
右は転輪蔵の「足」に当たる部分。←の方向に押して一周します


さて、京都検定の現地講習会
解説してくださる先生によって、ちょっと特徴がある
ある先生は「門」について、またある先生は「石」について詳しく話される

今回の先生は、「石」

清凉寺源融の墓

光源氏のモデル、源融のお墓


境内には、多数の石塔があります

清凉寺源融塔 清凉寺嵯峨天皇塔 清凉寺檀林皇后塔 清凉寺ちょう然墓塔
源融塔
宝筺印塔・鎌倉時代
嵯峨天皇塔
宝筺印塔・鎌倉時代
檀林皇后塔
多層石塔・平安時代
ちょう然墓塔
石幢・鎌倉時代


「門」にしろ、「石」にしろ、必ず「時代の見分け方」を教えていただける
石塔の場合の見分け方のひとつに、『面取り』がある(深い=古い)

・源融の宝筺印塔に見られる三角形の部分は「隅飾(スミカザリ)」
 別の石で作られるため、落ちやすい
 嵯峨天皇の宝筺印塔の隅飾は、落ちてしまった

・ちょう然(開山)の墓塔は、八角形をしていて、各面に仏立像がみられる


その他、境内案内

 梵鐘…足利尊氏、日野富子、足利義尚ら寄進
     鐘に名前が刻まれている

 阿弥陀堂…源融による棲霞観(寺)が前身

 豊臣秀頼の首塚…昭和55年、大阪城三の丸発掘現場から出土した秀頼を首が納められた


個人で来たら、さっと見て終わってしまいそうなところも、
じっくりお話が聞け、新しい発見に溢れてるのが、現地講習会のいいところ

「嵯峨野を歩く」は、清凉寺を離れ、まだ続きまーす♪


そうそう。京都検定的に、清凉寺といえば、必ず覚えるポイントを!
三大念仏狂言のひとつ、嵯峨大念仏狂言が4月に行われます
(他は、壬生念仏狂言とえんま堂大念仏狂言)



清凉寺を離れて、薬師寺~慈眼堂~檀林字跡 と歩きます


薬師寺

清凉寺の境内塔頭。通常非公開。

薬師寺。小さなお寺ですが、かなりオンリーワン
だって、「冥土の出口」なんですからっ
ご住職から、いろんなお話、聞けました

「六道(6つの冥界)」、冥土への入口といえば 六道珍皇寺
小野篁(おののたかむら)は、毎夜六道珍皇寺の空井戸から冥土に出掛け、
閻魔さんの手伝いをしたといいます
そして、朝になると別の井戸から戻ったそうです

その帰りの井戸が、嵯峨六道町の福正寺にあった空井戸
冥土から戻ることを「生まれる」ととらえ、この出口を「生六道(しょうろくどう)」と言ったそうです
福正寺は明治のはじめに廃寺となり、薬師寺と合併され、
ご本尊や仏事、言い伝えも受け継がれました

薬師寺生六道地蔵菩薩 生六道地蔵菩薩
(しょうろくどうじぞうぼさつ・木像80センチ)

地獄に行った篁が、猛火の中にお地蔵さんを見た

「お地蔵さんがなぜ地獄にいるのか?」と問うと、

火炎の中で苦しむ亡者の身代わりになったと言う

わが身を犠牲に庶民を救おうとするお姿に感涙し、

そのお姿を彫り、冥土の出口にある福正寺にまつった


背後に見えるのは、地獄の火




薬師寺のご本尊の心経秘鍵薬師如来は、
嵯峨天皇の勅願により、弘法大師が作られた(座像18センチ)
ながらく秘仏とされてきたが、今はお姿を拝むことができる

薬師寺本尊

心経秘鍵薬師如来

薬師寺三地蔵尊

境内の三地蔵尊
左から:夕霧地蔵尊、生六道地蔵尊の分身、瑠璃光地蔵尊


なお薬師寺では、毎年8月24日の地蔵盆法要の際、
「生御膳(なまごぜん)」と呼ばれるお供えをする
-7種類の野菜と、湯葉の帆付きのかぼちゃ舟のお供え-

薬師寺の本堂が一般に公開されるのは、この日限りです



薬師寺を後にし、清凉寺西門を出る

そのまま西に向かって歩くと、左手に慈眼堂
地域の集会所で、気をつけないと通り過ぎてしまいそう

この付近は藤原定家が山荘を営んでいた場所で、
定家の念持仏と伝えれれる千手観音像が、ここ慈眼堂に安置されています

慈眼堂 慈眼堂千手観音


慈眼堂は通常非公開。
ふだんは地域の方しか利用されないお堂も、この日は講習会参加者であふれかえる
道行く人が、「何がある?」って感じでびっくりされてました

光があたってないため、写真ではほとんど見えませんが
優しいお顔の、とっても素晴らしい千手観音さま
この観音さまを、ずっと地域で守ってこられたとか
だからこんなに、優しいお顔なのでしょうか…


慈眼堂を後にし、嵐山方面へ向かって歩きます


檀林寺跡 嵯峨児童公園

嵯峨天皇の皇后檀林皇后が建立し、

平安後期に廃絶した檀林寺が

あったとされる場所です



今回の現地講習会、こちらでお開き

嵯峨野の竹林を歩きながら、嵐山駅へと帰りま~す

嵯峨野竹林