京都検定講習会レポート

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京都検定講習会 特別プログラム 

 桓武天皇とその時代 -当年の費えといえども後世の頼り-


  日時:2009年5月30日 13:00~15:00
  会場:京都商工会議所

  講師:井上満郎先生 京都産業大学教授

       ご専門は日本古代史。京都市歴史資料館館長。


  ■ 井上満郎先生 著書 ■

桓武天皇
桓武天皇
平安京の風景
平安京の風景


桓武天皇とその時代-当年の費えといえども後世の頼り-


『当年の費えといえども後世の頼り』

 桓武天皇が亡くなった後、桓武天皇の事績について歴史書が書き残していることばのひとつ
 当年の「費え」にはなったが、それはその後、400年にわたり平安時代安定の礎となった
 
 桓武天皇を理解するにあたり、まず父・光仁天皇とその時代について歴史資料をもとに解説された


◇桓武天皇の父、光仁天皇

 光仁天皇の生前の名は白壁(しらかべ)
 
 藤原仲麻呂政権→道鏡・称徳政権での官僚を経、即位

 737年 続日本紀
      光仁天皇がはじめて歴史上の資料にあらわれる
      官僚としてスタートしたことが記されている

 759年 公卿補任(閣僚リストのようなもの)
      大保 :藤原恵美押勝(藤原仲麻呂)-奈良時代最も優秀な政治家のひとり
      非参議:白壁王
      (大保、非参議は官職名)

 762年 公卿補任
      大師 :藤原恵美押勝(藤原仲麻呂)
      中納言:白壁王 「三木(さんぎ)」を経ずとあり、2階級特進を意味する
      
      同時に藤原仲麻呂の子供3人 眞光(まみつ)、訓儒麿(くずまろ)、朝獦(あさかり)が
      一気に官僚に。
      反感をかうと同時に、それは藤原仲麻呂政権の不安定さも意味する

 764年 藤原仲麻呂反乱。敗れる
                   ↓
      道鏡・称徳天皇の政権へ

      白壁王は道鏡政権においても、官僚を務め、766年 大納言になる

 770年 称徳天皇亡くなる。皇太子を定めていなかった。
      当時皇太子の役割は 1.天皇の後継者 2.現天皇とともに政権を運営

      白壁王が皇太子となり、即位する
      皇太子となった理由 1.年齢が高い 2.政治的功績を積んできた


◇桓武天皇、即位とその背景

 桓武天皇の生前の名は山部(やまべ)

 光仁天皇の皇太子は井上皇后との子・他戸(おさべ)
 山部は光仁天皇の子であるが、皇位継承者ではなかった

 772年 皇后井上が巫蠱(ふこ:呪い)の罪で廃后。他戸も皇太子を廃す
                                ↓
 781年 光仁天皇譲位、桓武天皇即位。弟の早良親王を皇太子とする


◇桓武天皇、苦難の道

 782年 氷上川継反乱
      即位直後に起こっている。桓武天皇の地位は決して安定的なものではなかった。

 785年 桓武天皇のブレーン、藤原種継暗殺される
 
      先に死去した大伴家持が首謀者とされ、早良親王は関与したとし捕らえられる
      早良親王は無実を主張し、ハンガーストライキ→餓死
      自らの意思での餓死は、古代ではこの一例のみ。異様な死。→怨霊?

 この後、皇后の藤原乙牟漏(おとむろ)、母の高野新笠(たかのにいかさ)、側室?の藤原旅子(たびこ)
 の3人が立て続けに亡くなる。また、皇太子の安殿(あて)が病に

 早良親王の怨霊を鎮めるため、故早良親王を崇道天皇と追称する(先例はない)

 ※在位期間のない天皇 5人いる
   ・奈良時代 天皇になった人の父に称号が与えられた 3例
   ・明治時代に1例
   ・早良天皇(崇道天皇)


 (この間、平安遷都と蝦夷追討) 解説はなかった
 

 796年 公卿補任
      和気麿、坂上田村麿、菅野真道の3人の渡来人が官僚リストに名を連ねる

      渡来人が閣僚となるのは、桓武天皇の時代のみ  
      
      これまでの解釈:
      母の高野新笠は渡来人の血を引いており、自分に流れる渡来人の血を重視した

      井上先生の解釈:
      権力争いが絶え間なかった奈良時代。
       度重なる政治抗争から無縁であった渡来勢力を抜擢し、政治的安定をはかろうとした


 805年 藤原緒嗣(おつぐ)と菅野真道(まみち)に天下の徳政について論じさせる
      「天下が苦しいのは軍事(4度にわたる蝦夷追討)と造作(2度の遷都)」
      と主張した緒嗣の意見によって、平安京造宮を中止



歴史資料から、今まで知らなかった人物像や出来事が理解でき、この時代を身近に感じることができた
それにしても、こんなに資料があるとは!

テーマにあった「当年の費えといえども後世の頼り」。
「費え」の詳しい解説や、平安京に込められた思い、そのあたりのお話が聞けなかったのが残念。


お土産でいただいたもの:

  『平安京講話』-京都市平安京創生館ガイドブック
  平安京について、井上先生がガイドブックの中で解説されている

  京都市平安京創生館については、こちら